緊急事態措置やまん延防止重点措置にともない、飲食店では休業要請や時短営業、お酒やカラオケの提供自粛などが求められています。そして、要請内容を確認してみると「国の業種別ガイドラインに従う」という文言が出てきます。
協力金申請を行ったことがある飲食店の方は既に良くご存じかもしれませんが、この記事では、飲食店向け協力金の支給要件などにも書かれている「業種別ガイドライン」について、外食業編として紹介します。
外食業のガイドラインとは?
■このガイドラインは、、、
飲食店における新型コロナウイルス感染症防止と、お客様及び外食店舗で働く従業員の安全、そしてその家族に外食店舗が安心して働ける場所であることを理解してもらうためのものです。ガイドラインで紹介する具体的な取組みを参考にして事業の継続に役立てて下さい。
■このガイドラインは、、、
一般社団法人日本フードサービス協会と一般社団法人全国生活衛生同業組合中央会(メモ①参照)が協力して作成したものです。外食事業者は、業態・事業規模が様々で立地によっても条件が異なるため、ガイドラインを守りながら実態に合わせて創意工夫するようお願いします。
メモ①
一般社団法人全国生活衛生同業組合中央会から、下記6協会の意見を集約しています。
■全国麺類生活衛生同業組合連合会
■全国飲食業生活衛生同業組合連合会
■全国すし商生活衛生同業組合連合会
■全国喫茶飲食生活衛生同業組合連合会
■全国中華料理生活衛生同業組合連合会
お客様の安全について
①入店時
■飛沫感染・接触感染を防止するために十分な間隔をとることが重要であることをお客様に理解してもらう。
■店内が混む時は入店制限を行う。
■店内飲食やテイクアウトで順番待ちをする場合は、床に間隔を示すテープを貼るなどして、1m以上の間隔を空けて待つように誘導する。
■ 順番待ちが店外に及ぶ場合は、従業員が間隔を保つように誘導するか、整理券を発行するなどして行列を作らないよう工夫する。
② 座席の配置
■少人数の家族、介助者が同席する高齢者・乳幼児・障害者等が同席する場合で、パーティションなどを置かない場合でも、他グループとの相席は避ける。
■他のグループとはできるだけ1m以上の間隔を空ける。それが難しい場合は、パーティションの設置や、斜めに着席するなどして対応する。
③テーブルサービスとカウンターサービス
■お客様が食事をするテーブルで注文を聞くときは、お客様の側面に立ち、可能な範囲で間隔を保つ。
■カウンターで食事をしてもらうお店は、可能な範囲で従業員とカウンター席との間隔を保つ。
■カウンターで注文を受けるときはお客様の正面に立たないように注意する。
■カウンターでは、お客様と従業員が会話することを想定し、従業員のマスク着用のほか、仕切りを設置するなど工夫する。
■個室を使用する場合は、十分な換気を行う。
■お客様が入れ替わる都度、テーブルやカウンターを消毒する。
■料理は大皿盛りを避け、個々に提供する。
■鍋料理や盛り合わせ料理などを提供する場合は、従業員等が取り分けるなど工夫する。
■スプーン、箸などの共有や使い回しは避けるよう、掲示等により注意喚起する。
■お客様同士のお酌、グラスやおちょこでの回し飲みは避けるよう、掲示等により注意喚起する。
■大声での会話は避けるよう、掲示等により注意喚起する。
④会計処理
■食券を販売している店舗は、券売機を定期的に消毒する。
■お会計するときは、できれば電子マネー等の非接触型決済を導入する。
■現金、クレジットカード等の受け渡しが発生する場合には、手渡しで受け取らずにトレイなどを使用する。
■使用するトレイは定期的に消毒する。
■会計のする度に、手指を消毒する。
■飛沫を防ぐために、レジとお客様の間にアクリル板等の仕切りを設置するなど工夫する。
⑤ テイクアウトサービス
■テイクアウトを実施している店舗では、お客様が店内で滞在する時間を短くするために、事前予約注文を受け付けるなどの仕組みを導入する。
■テイクアウト客と店内飲食客の動線を区別し、接触を避けるように工夫する。
■食中毒等の防止のため、料理は早めに消費するよう、口頭もしくは注意書きを添えて
お客様に注意を促す(特に気温の高い時期)。
⑥デリバリーサービス
■デリバリー担当の配達員と来店客が接触しないように、可能であればデリバリー専用カウンターを設け、両者の動線が重ならないように工夫する。
■料理の受渡しは必ず手指消毒してから行う。
■代金が支払い済み(オンライン決済等)で、注文者が希望する場合は、注文者が指定した所に料理を置くなど非接触の受渡しを行う。
■配達員は、店舗従業員と同様の健康管理、手洗い等の衛生管理を実践し、マスクを着用する。
■配達する料理の容器は、配達員が直に触れないよう袋等に入れ、配達に使用する運搬
ボックス等は使用するごとに消毒する。
■食中毒等の防止のため、料理は早めに消費するよう、口頭もしくは注意書きを添えてお客様に注意を促す(特に気温の高い時期)。
従業員の安全衛生管理
■従業員の健康管理で最も重要なことは、「各自が店舗に新型コロナウイルスを持ち込まないことである」を周知徹底する。
■食品を扱う者の健康管理と衛生管理を徹底する。
■従業員は必ず出勤前に体温を計る。
■発熱や風邪の症状がみられる場合は、店舗責任者にその旨を報告し、勤務の可否等の判断を仰ぐ。
■感染した従業員、濃厚接触者と判断された従業員の就業は禁止する。
■店舗では大声を避け、マスクやフェイスガードを適切に着用する。
■頻繁かつ適切な手洗いを徹底する。
■従業員やその家族が過度な心配や恐怖心を抱かないよう、また、風評被害や誤解などを受けないよう、事業者は現状を的確に従業員に伝える(従業員へのリスク・コミュニケーション)。
■従業員のロッカールームや控え室は換気し、室内は定期的に清掃する。
■休息中もマスクを着用するなど工夫する。
店舗の衛生管理
【店内】
■店内は適切な換気設備の設置と換気設備の点検を行い、徹底した換気を行う。(窓・ドア等の定期的な開放、常時換気扇をの使用など)
■換気設備が不十分な店舗や個室を使用する場合は、十分な換気を行う。
■店内清掃を徹底し、店舗のドアノブ、券売機、セルフドリンクコーナー等の設備等、多数の人が触れる箇所は定期的に消毒液で拭く。
■テーブル、イス、パーティション、メニューブック、タッチパネル、卓上ベル等について、お客様の入れ替わるタイミングや繁忙時間帯前後に、消毒剤や洗剤などで拭く。
■卓上には原則として調味料・冷水ポット等を置かないようにする。
■調味料・冷水ポット等の撤去が難しい場合は、お客様が入れ替わるタイミングや繁忙時間帯前後に、消毒剤や洗剤などで拭いたり、用具の交換を行う。
■ビュッフェやサラダバー及びドリンクバーは、利用者の飛沫がかからないように食品やドリンクを保護する。(カバーを設置するか従業員があらかじめ、またはその場で小分けする、客席と料理提供空間が近い場合は適度に仕切るアクリル板等の仕切りを設けるなど)。
■トング等は頻繁に消毒・交換するか、手袋の着用を促す。
■従業員は、店内の一箇所にお客様が集まらないように注意する。
【トイレ】
■トイレは毎日清掃し、ドアやレバー等、色んな人が触れる箇所は定期的に消毒する。
■トイレのハンドドライヤーは使用を中止し、ペーパータオルを置く。
■トイレ使用後は蓋をして流すよう、使用者に注意を促す。
【厨房】
■厨房の調理設備・器具を台所洗剤(界面活性剤)で拭き、作業前後の手洗いなど、一般的な衛生管理を徹底する。
【備品】
■感染防止対策に必要な備品(消毒剤、不織布マスク、手袋、ペーパータオル、及びそれらの使い捨て用品を廃棄する容器等)の一覧表(リスト)を作成し、十分な量を準備しておくか、または緊急時にすぐに入手できるよう予め手配しておく。
■感染防止対策に必要な備品について、普段から使用した分をその都度補充し、常に一定の必要量を備蓄しておくことが望ましい。
■ユニフォームや衣服はこまめに洗濯する。
【掃除】
■調理中に出た調理くずや、食べ残し、鼻水、唾液などが付いた可能性のあるごみ等の処理は手袋・マスクを着用してビニール袋等に密封して縛り、マスクや手袋を着用して回収。
■マスクや手袋を外した後は、必ず手を洗う。
質問集
ガイドラインで書かれていることを実践するにあたり、出てくる疑問について紹介します。
問1.
ガイドラインでは、条件付きながらビュッフェスタイルや密室となる個室の利用を認めているが、3 密対策として問題ありませんか?
■外食を利用されているお客様は個人だけでなく、家族、親しい友人などのグループもあり、不特定の個人とグループは分けて考える必要があります。
■政府から横並びを提案するような「新しい生活様式」が示されていますが、入店した後に、家族で間隔をあけて横並びということは現実的ではありません。
■ビュッフェによる飲食の提供については、カバー等による飛沫防止、トング等の頻繁な交換、あらかじめ小分けする等の工夫や、お客様への消毒手洗いのお願い等、感染防止策を工夫願います。サラダバー、ドリンクコーナー等についても同じです。
問2.
「店舗の実情に沿った創意工夫」とは、具体的にはどのような場合ですか?
■例えば、人と人との十分な間隔を「できるだけ1m以上」とされていますが、店内のスペースから難しい店もあります。カウンターで固定式椅子の場合は、他の人やグループと椅子一脚分をあける、対面席は他の人やグループと背中合わせに配置するなど、店の状況に応じた創意工夫が求められます。
■卓上調味料が撤去できない場合に「お客様が入れ替わる都度、消毒や交換を行う」とされていますが、和食・洋食・麺類等のファーストフード店など、来店客の入れ替わりが頻繁な場合は実施することは難しく現実的ではありません。この場合は、可能なタイミングで消毒する等、従来行っている衛生管理を徹底してください。
問3.
「熱や異常が認められる場合は店内飲食を断る」ということを店舗入口に掲示することとされていますが、お客様の健康状態は、現場でどのように確認すれば良いですか?
■入店の際に非接触型体温計を利用した検温や、従業員による口頭での健康状態の確認などが考えられます。
■専用カウンターを設けることが望ましいですが、スペースに余裕がない場合は、受け渡し場所(レジの場合もあります)と飲食されているお客様とに十分な間隔を確保する等の工夫が求められます。
■設置型のアクリル板やカーテン式のビニールシート、テーブル席間の衝立・パーティションなど、店舗の事情に合わせた工夫が求められます。
■アクリル等のプラスチック製品は可燃性であり、周辺で火を扱う環境(コンロ周辺や喫煙エリアなど)では、使用しないようにお願いします。
問6.
マスクやフェイスガードを適切に着用としていますが、加熱調理を行う厨房スタッフや夏場の野外作業(車両の誘導等)などでは、熱中症の心配があり常時着用することが困難です。他に方法がありますか?
■高温の環境においても、お客様の安全のため従業員の飛沫防止対策は必要です。通常のマスクやフェイスガード以外に、口元を覆う密着しないプラスチック製のマスク(マウスシールド)など、従業員の健康に配慮した工夫をお願いします。
問7.
店内の換気を徹底するとしていますが、常にドアや窓を開放しておかなければいけないのですか?
■店舗に十分な換気設備がある場合は、換気運転を行うことでドア等の開放は必要ありません(店舗や入居している建物の換気設備を確認してください)。
■換気設備がない場合は、客数など店内の状況に応じて定期的に換気を行うようにお願いします。
問8.
「換気設備が不十分な店舗や個室を使用する場合には、十分な換気を行う」とありますが、具体的な方法を教えてください。
■施設の換気については、厚生労働省作成「「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」を参考にしてください。
①機械換気がある場合は、常時運転するなど適切に稼働させ、徹底した換気を行う。また、必要に応じて換気設備のフィルターの清掃等を行う。
②機械換気がない場合は、30 分に1回以上、数分程度、二方向の窓を全開するなどにより換気量を確保する。窓が一つしかない場合は、ドア等を開ける。
③換気が十分でないおそれがある場合は、C02 センサーの使用等により、換気状況の把握に努める。
④窓開けによる換気を行う場合は、夏期・冬期は、室温と湿度に十分注意し、室温と湿度を維持しようとする際に窓が十分に開けられない場合は、窓の開放と併せて HEPA フィルター付きのろ過式の空気清浄機や加湿器などの使用を検討すること。
(参考)「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
問9
レジ袋の有料化に伴い、テイクアウトにエコバックを持参するお客様が増えています。感染防止のために注意すべきことはありますか?
■お客様の安全を確保するためには、お客様やお客様の持ち物に従業員が直接手を触れないことが基本となります。持ち帰り商品はお客様自身がエコバックに入れるように推奨してください。
■衛生面の考慮や汚損防止のため、汁漏れ等の心配がある商品は袋などに入れてお渡しする対応も必要です。
■紙やバイオマス素材の袋、持ち手のない袋、あらかじめ袋に入れた状態(要否の意思表示が可能な場合を除く)で販売や配達する場合は、有料化の対象ではありません。
最後に
この記事は、2021年6月8日時点で「全国生活衛生営業指導センター」と「日本フードサービス協会」のホームページに掲載されている情報をまとめて紹介しています。情報が更新される可能性がありますので、最新情報はそちらのホームページでご確認下さい。